声にだして読みたくなるブログ

大村高広丨建築と写真を中心に、音楽、映画、美術、人文学などについて書いている備忘録です。

読書・論考

JUNE.17,2019_形式の可塑性

現在にいたるまでのおりふしで、建築物における強い形式性はそこでの行為の不活性化もたらす一種の悪因とみなされてきた。しかし、ルイ・カーンの建物にしろ、アドルフ・ロースの住宅にしろ、建築における明確な形式性がむしろ行為を活性化するために差し向…

JUNE.3,2019_なぜフィクションか?①

ジャン=マリー・シェフェールの『なぜフィクションか?』(慶應義塾大学出版会, 2019 / Jean-Marie Schaeffer: Pourquoi la fiction ?, Editions du Seuil, 1999)がすごくおもしろかった。ぼくの最近の興味どストライクな内容。さらにnoteで立石遼太郎さん…

MAY.31,2019_いくつものおおきさ

きのう、ギャラ間の展覧会に合わせて開催された中山英之さんの講演会を聞きにいってきた。大変におもしろくて、本当にいってよかったと思った。中山さんほどストイックに「おおきさ」を追求している建築家は他にいないかもしれないなと、あらためて感じたの…

MAY.27,2019_新たな約束事

門林さんのテキスト「メディウムを混ぜかえす」(『イメージ学の現在』第10章)がたいへん勉強になった。ロザリンド・クラウスの「ポストメディウム的状況 / 条件」をめぐる議論を、クラウスが刺激を受けていたスタンリー・カヴェルの映画理論にも目を配りな…

MAY.24,2019

こっそり美術出版社の「芸術評論募集」という論文のコンペに応募していたのだけど、めでたく落選となった。「アナーキズムの条件」というタイトルの、写真家の中平卓馬をあつかったテキストで、要旨は以下の通り。 - 1974年、中平卓馬は自身が表紙を担当し…

MAY,19.2019_共生②

共生、つまりあるオブジェクト同士の(仮設的な)接続関係を考察することは、建築をオブジェクト指向的な仕方で把握する際の重要なポイントとなる、ように思う。OOO的に建築を考えるということは、たぶん奇っ怪な、weirdな形態を生み出すことではなく、ある…

MAY.18,2019_共生①

ハーマンの新刊のメモ、ブログに書いていなかった。この本は「共生」というキーワードが出てきたので個人的はけっこう収穫が大きかった。以下、メモ。 - モノについての知識には基本的に二種類しかない。つまり、われわれにはモノが何でできているか、そして…

APR.27,2019_なんという感動

「感動」という現象を考察しているユベルマンのテキストがすばらしかった(ジョルジュ・ディディ=ユベルマン: なんという感動! なんという感動?, 橋本一径訳, photographers’ gallery press no.13, pp.69-85, 2015)。2013年に高校生にむけておこなわれた…

APR.21,2019_反復の先にある知覚について

きのうのことだけど、お誘いをうけて2件の建物の見学会に参加させていただいた。運のいいことに、その終わりに(2件目に見学させていただいた物件の担当だった)先輩に食事にさそっていただいた。実務に向き合っている先輩とじっくりと建築の話ができてとて…

APR.17,2019_エド・ルシェ

ジェフ・ウォールの「取るに足らないものの印」(1995)に出てくるエド・ルシェに関する一説はとても魅力的だ。ウォールは「アマチュアリズムの“模倣”」というこのテキストの中心的な主題の、もっとも純粋かつ模範的な作例のひとつとして、ルシェが1963年-70…

APR.12.2019_やわらかいからだ

助教の先生と話していて思いつきでしゃべっていたことのメモ。何かを批評したり、論じたりしたりするとき(とりわけ建築について論じるとき)、あらかじめ安定的に統一された「私」を措定することも、あるいは逆に「私」を完全に排除して(したことにして)…

APR.11,2019_せんだいメディアテーク

元号が変わるということでなんとなく考えていたのだけど、平成を代表する日本の建築はなんだったのか、という問いに対しては、たぶん多くの人が「せんだいメディアテーク」(伊東豊雄)の名を上げるのではないか。 せんだいが面白いのは、評価のしかたが(あ…

MAR.30,2019_講評会という制度について

ずいぶんと前のことなのだけど、2月にうちの学校で修士設計の講評会があって、ぼくは学部の卒業設計についてはしっかり聞けたわけではないので修士についてだけということになるのだけど、その講評会の進め方はちょっと違和感を感じるものだった(誰が悪いと…

MAR.25,2019_ 失われたモノを求めて

『失われたモノを求めて』(池田剛介)を読んだ。これまでの池田さんの論考や作品にすごく共感していたのでこの初の単著をとても楽しみにしていたのだけど、その期待を裏切ることなく、すごくよかった。とくに書き下ろしの論考「失われたモノを求めて」では…

MAR,10.2019_アアルト展の会場設計について

告知もかねて、「アルヴァ・アアルト -内省する空間-アアルトの図書館と住宅」展の会場構成にあたって考えていたことを書いていきます。 この展覧会はアアルトの住宅と図書館に焦点をしぼり、とくにその内省的な空間の質に注目したもので、中心となる展示…

FEB,3.2019_岡崎乾二郎『抽象の力』

岡崎乾二郎の新刊『抽象の力』は、2017年に豊田市美術館でおこなわれた同名の展覧会に合わせ書き下ろされた長大な論考(展覧会の公式サイト上で公開されていて、個人的には当時何回も読み返した論考だった)を中心に、ここ10年余り期間に書かれた岡崎さんの…

FEB,2.2019_中平卓馬について②

Google Search Consoleをチェックしていると、「中平卓馬」という検索ワードでこのブログに到達していただいている方が非常に多い(切ないことに、ぼくの名前で検索してくれている方よりも多かったりするくらいだ)。ということで今回は、「次回につづく(多…

JAN,26.2018_零度・透明・環境=建築の手許性

前回の記事の補足として、いくつかのメモを。 www.ohmura-takahiro.com ○空間から構成へ 「家形」から「家型」への用語の微妙な変化は、即物的なモノ同士の関係性に焦点をあてた思考だけではなく、人間からみた世界そのものにもちゃんと向き合っていこうとい…

JAN.21,2018_家形と家型

坂本さんのテキストをあらためて読みなおしたりしているのだけど、「家形」から「家型」への微妙な用語の変遷は、あらためてけっこう重要だなあとおもう。 《代田の町家》(1976)の発表時にはまだ「家形」あるいは「家型」という言葉は用いられていない。そ…

JAN.18,2018_四次元が見えるようになる本

後輩から教えてもらった『四次元が見えるようになる本』(著者は数学者の根上生也さん)という本がすごくおもしろかった。アナロジーとかではなく、本当に四次元がみえるようになってしまえる本だった。 とくにおもしろいのが、著者が “四次元を見るための奥…

JAN,15.2019_加湿器、ジェフ・ウォール

土曜日のことだけど、すこしだけ雪がふった。粉雪ってやつだろうか、きれいだった。たしかに土曜はそれほど寒かった。ぼくは防寒力が貧弱なコートしかもっていいないので、コートのしたにウィンドブレーカーをきてそのしたにベスト型のダウンを着込むという…

DEC.30,2018_(独断と偏見による)世界の若手建築家特集

○年末である。テレビは特番ばかりになってきて、この記事を書いている今は日テレで出川さんのドッキリをやっているのだけど、これを見ているとなんだか徐々に作業のやる気が削がれていく気がする。だらだらせよ!だらだらせよ!、と天から指令を受けているみ…

DEC.19,2018_ソル・ルウィットについて

○ 現在準備中の某書籍のために、ソル・ルウィット(Sol LeWitt,1928-2007)について少し調べていたのでメモ。ルウィットのプロジェクトで特徴的なのは、構想された概念(concept)がまずもってあり、展示される作品においては、それを「表象する手続き」がか…

DEC.14,2018_方位論文を近いうちにまとめようと思う

○ 最近カントをよく読んでいるが、今更ながらあらためて、カントめちゃくちゃおもしれ〜となっている。ただ単純に読み物として面白い。『カント事典』という書籍もその内容の充実っぷりが神がかっていて、流し読みするだけでもすごく楽しい(日本のカント研…

NOV.4,2018_パラーディオと額縁性

おしらせ 「CV / Works / Projects」ページの「倉賀野の外構」と「倉賀野の別棟」をアップデートしました。今年の6月に竣工した庭のプロジェクトです。派手なことは何もしていませんが、既存の些細な変更で環境をどれだけ豊かなものにできるかということを考…

OCT.30, 2018_サンテリア幼稚園

イタリアで撮った写真⑩ 「カサ・デル・ファッショ」から「サンテリア幼稚園」へ。今回の旅行で最も感動した建物だった。というか、ぼくの生涯でいまのところナンバー1だ。あきらかに。散々図面や写真で見てきたが、その想像を遥かに超えてきた。実はそういう…

OCT.24, 2018_カサ・デル・ファッショほか

イタリアで撮った写真⑨ 引き続きコモ。《ノヴォコムン》の周辺をうろちょろする。すぐ近くにテラーニ最後の実施作品である《ジュリアーニ・フリジェーリオ集合住宅》(1939-40) があるのだけど、それはまた個別の記事で。まずはコモ湖周辺ででみたものをざっ…

OCT.14, 2018_補講:プロジェクト・アウトノミア

新しい政治的主体性を構築する試みは、とりわけ戦後の社会がポスト工業社会へと転換するなかで、世界同時多発的に起こったことであった。 たとえばイタリアにおいて、1960年代を通して専門領域の垣根を超えて議論され理論化された「自律性」のプロジェクトは…

OCT.5, 2018_ガララテーゼの集合住宅

イタリアで撮った写真⑥ 前回書いた《サンドロ・ペルティーニ記念碑》からすぐそこにあるレストランでミラノ・カツレツを食べたあと(骨付きの肉厚で超おいしかった)、《ガララテーゼの集合住宅》(1969-73)へとむかった。《ガララテーゼの集合住宅》は建築…

SEPT.30,2018_セグラーテの噴水

イタリアで撮った写真④ フィレンツェの翌日。この日は午後から学会のオープニングパーティーがあったのだけど、それまでの時間でミラノ市内のアルド・ロッシの建築物を見学した。研究室の助教で、アルド・ロッシの専門家である片桐先生がツアーを組んでくだ…