声にだして読みたくなるブログ

大村高広丨建築と写真を中心に、音楽、映画、美術、アニメ、人類学等々について書いているブログです。

読書・論考

JULY12,2018_建てることの権利について

○今月の『10+1』に掲載されている福尾匠さんによる論考「プロジェクション(なき)マッピングあるいは建てることからの撤退」がとてもおもしろかった。今月はヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の日本館の特集で、選考段階でいろいろ問題があったことが記憶…

JUNE29,2018_ビュスタモントとメリクリ

○蒸しかえるような暑さが続く。もう一回くらいまとめて雨が降ったりするのかな。去年の記事で「結露に近いような汗」と書いた日のことを思い出す。ちょうどいまくらいの気候だった気がするのだけれど、しかし今年は季節の進行が早いなと思う。 www.ohmura-ta…

JUNE10,2018_カントの復習

○ジル・ドゥルーズの『スピノザと表現の問題』(法政大学出版局, 1991)をドゥルーズを専門にする研究者の方と精読するという、謎のハードコアな会に参加させて持っているのだが、もちろんぼくは哲学は門外漢なので、かなりついていくのが大変だ。 ドゥルーズ…

JUNE5,2018_部分的つながり②

○昨日の続き。ウセン・バロクの人々の儀礼における「図と地の反転」の基底にあるものはなんだろうか。 o-tkhr.hatenablog.com * * * ひとつは、各々のオブジェクトが「同じ素材」からつくられているという認識である。 まず、ワントアト盆地の住人は儀礼…

JUNE4,2018_部分的つながり①

※noteの方でまとめました https://note.mu/tkhrohmr/n/n6d373bb5d715 https://note.mu/tkhrohmr/n/nd99aae0c42a1 ///////////////////////////////// ○必要があってストラザーンの「部分的つながり」を読み直しているが、やはり圧倒的に面白い。特に後半の、…

MAY28,2018_H. F. マルグレイヴ

○研究室の助教である片桐悠自さんが翻訳に参加された「現代建築理論序説: 1968年以降の系譜」( ハリー・F・ マルグレイヴ+デイヴィッド グッドマン著, 澤岡清秀監訳, 鹿島出版会, 2018.5)を読んだ。1968年以降の建築理論を網羅的に、かつ実証的に整理されて…

MAY27,2018_ヴェンチューリについて

○R.ヴェンチューリの『建築の多様性と対立性』(1966) は建築をやっている人間にとって必読書のひとつなのだけど、ここで唱えられている「ダック[duck]」と「装飾された小屋[decorated shed]」というあまりにも有名な対立関係は、表層的にしか受け取られてい…

MAY12,2018_ムクドリと高村光太郎

○ようやく天候が安定してきた。近所の緑道では、ムクドリがすごい勢いで草むらをつついていた。あのかわいらしい黄色いくちばしをつかって、何かを夢中に、超食べてた。それを眺めながらぼくも、セブンでかったアイスコーヒーを超飲む。天候的には、今の時期…

APR.20,2018_中平卓馬について①

○けっこう前のことだけど、渋谷のCASE TOKYOで中平卓馬の個展『氾濫』をみてきた。 1938年に東京で生まれ、2015年に亡くなった写真家で批評家の中平卓馬。同展で紹介する作品『氾濫』は、1974年に東京国立近代美術館で開催された『15人の写真家』展に中平が…

APR.6,2018_図4 建築のスケール

○昨年からずっと準備してきた書籍が、本日発売されました。「図4 建築のスケール」という本で、編集及び執筆を担当しました。本書の概要と使い方(読み方)に関して書いていこうと思います。 図4 建築のスケール 作者: 図研究会 出版社/メーカー: 東海大学 発…

MAR.30,2018_幾何学の起源

○中田光雄の『現代思想と〈幾何学の起源〉 超越論的主観から超越論的客観へ』を読んでいる。幾何学をあつかった哲学者といえば『幾何学の起源』のフッサールが思い浮かぶけれど、実はミシェル・セールも同名の『幾何学の起源』という本を書いていたりする(こ…

180207_わたしたちの家

●清原惟監督の「わたしたちの家」を、渋谷のユーロスペースでみた。とてもおもしろかった。 http://www.faderbyheadz.com/ourhouse.html youtu.be 2つの物語が「同時」に同じ家で進行することが、この映画の構成における骨子となっている。2つの物語は異なる…

180203

●藝大の卒業・修了作品展にいった。先端の富澤大輔さん、山本暦さん、建築の板坂留五さん、油の奥誠之さんの作品がとてもおもしろかった。 ●富澤さんの作品はスライドの映写機を2台使ったものだった。富澤さん自身が撮ったであろう新しい写真と、過去に撮ら…

180119_熊谷守一「生きるよろこび」

●午後、新幹線で黒部宇奈月温泉駅を出発し、17時ごろ東京駅に着く。そのまま、熊谷守一「生きるよろこび」展を東京国立近代美術館でみた(近美は金土、20時まで開館している)。1950年以降のモリカズがなぜこれほどまでに魅力的なのか、なんとか整理しないと今…

171010_未来の幽霊

もう3週間くらい前になるけど、「未来の幽霊 ―長沢秀之展―」を見てきたので、備忘録もかねて、少し書き残しておこうと思う。 記念写真や肖像写真といった写真を、キャンバスの上に正確に模写する。そしてその上に、筆致の集積を点描のように置き、色彩を重ね…

170711

●好きな小説家は誰ですかと聞かれると、だいたい庄司薫だと答えている。とくに、「赤頭巾ちゃん気をつけて」に関しては、自分は日本でもトップレベルでこの作品のことを愛している人間ではないかと思ってしまうくらい好きだ(多分いまどき感があるだろうし)。…

170630

●シャビロの「モノたちの宇宙」は平たくいえば、グラハム・ハーマンやレイ・ブラシエの哲学に代表される、近年発展が著しい「新しい唯物論」の流れを、ホワイトヘッドの思想と関連させてまとめた本なんだけど、そこではたびたび擬人化や生気論の話が出てくる…

170614_写真についてのノート③ それは=かつて=あった

写真についてのノート③ ●『明るい部屋』のつづき。後半戦は「前言撤回」によって始まる。 《かくして私は写真から写真へと遍歴を重ね、なるほど自分の欲望がどのように働くのかを知ったが、しかし私は「写真」というものの本性(エイドス)を発見したわけでは…

170609 写真についてのノート② プンクトゥムについて

写真についてのノート② ●前回からの続き。バルトの「プンクトゥム」を補助線に、“眼”をいかに制作していくのかという方法論について。 写真を、自分がそのときに見ているイメージに近づけるようなかたちで撮ることは、なんだかつまらない気がする。なぜなら…

170608 写真のためのノート① 眼の制作について

写真のためのノート① ●僕は写真はまるっきり門外漢なのだけど、このごろ写真を撮っていて、実際撮るからこそ気づくこととか感じたことが色々あったので、言語化してみようかと思う(何パートで完結するかわからないけれど)。 ●写真とは、自分が今見ている世界…

160424 人類学者のスケール論③

o-tkhr.hatenablog.com o-tkhr.hatenablog.com『部分的つながり』のつづき。* * * この図は「カントールの塵」と呼ばれるもので、『フラクタルの1種で、閉区間 [0, 1] に属する実数のうち、その三進展開のどの桁にも 1 が含まれないような表示ができるも…

160329 存在論としての「建ち方」

去年取り組んだ、大学院後期の設計課題の成果が本としてまとめられた。過去の著名な住宅作品を各自選定し、そこに隣接して新たな住宅を設計するという課題。選定した、いわゆる名作と呼ばれる住宅(東孝光の「塔の家」や安藤忠雄の「住吉の長屋」、篠原一男の…

160324 人類学者のスケール論②

o-tkhr.hatenablog.com ひきつづきマリリン・ストラザーンの「部分的つながり」の冒頭より。 人類学は、20世紀後半にはすでに、多元的な世界についての見方からポスト多元的と呼べるような見方へと移行している。私の説明もこの意向に倣ったものである。無…

160323 人類学者のスケール論①

現在僕は、所属している研究室で長年行われてきた「スケール(尺度)」についての研究をまとめ、8月を目処に出版することを目指して作業している(→結局発売は1年半ほど延びました、、。APR.6,2018_図4 建築のスケール - 声にだして読みたくなるブログ)。そうい…