声にだして読みたくなるブログ

大村高広丨建築と写真を中心に、音楽、映画、美術、人文学などについて書いている備忘録です。

MAR.17,2019_最近の音楽

ここ最近も最高な音楽と出会いまくっているので、とくにオススメの作品をいくつか紹介。

 

○ Lage Lund / Terrible Animals

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Lage Lund (G & Effects)  / Sullivan Fortner (P) / Larry Grenadier (B) / Tyshawn Sorey (Ds)

待ちに待ったラーゲ・ルンド5枚目のリーダーアルバム。歴史的名盤というのはこういうものを指すんだと思った。本当にすごく良かった。

楽曲がすばらしいことだけでなく、とにかくラーゲはソロを一曲も外していない。相変わらず全体的に抑制されたアドリブの組み立てだけど、たんに難解なだけではなく、そこには身体的な快楽というか、音楽的な展開のカタルシスみたいなものがほどよいバランスで実装されていて、いぜんよりも格段に聞きやすくなっていると思った。フレーズがどうとか、もはやそういう次元の演奏ではない。もっと抽象的に、リズムとハーモニーの時間的な布置だけがある、と、あえて言語化するならそういう感じ。

「4. Haitian Ballad」は曲だけ聴いてればメセニーがやっててもおかしくないような感じのバラードで、個人的にはけっこう驚いた(「10. We Are There Yet」も然り)。『Unlikely Stories』(2010)や『Small Club, Big City』(2011)のころの暗ーくジメジメした作曲の方向性とは明らかに異なってきているなぁと思う。この雰囲気はBryn Robertsと共同した『Nightsong』(2016)および『Hide the Moon and the Stars』(2018)に著しく近い。端正で美しく、肩に力の入っていない(どこかくつろぎ感のある)Bryn Robertsの音楽から、ラーゲも少なからず影響を受けているのかもしれない。

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前半の3曲はとくに好きだった。「1. Hard Eight」は徹底してビートがハネないパート(ラーゲらしい静的な、イーヴンで拍を刻んでいく部分)と、ビートに動きが出るパート(ワルツの軽快なテンポが強調される部分)を対照的に繰り返していくユニークな構成の曲。「2. Aquanaut」は以前からYoutubeでこの曲のライブ動画を繰り返し聴いていたので、個人的はすでに大好きな曲になっていた。

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漂うようなテーマにのせてまずドラムソロが展開し、上がったテンションのままギターソロへ。ラーゲはここで珍しく音を歪ませている。彼はRAT(という有名なディストーションペダルがあるのだけど)の歪みの回路をカットしてブースター+イコライザーのようなかたちで使用しているくらい(そんなひとほかに聞いたことない)、クリーンな出音を固持するタイプの人なのだけど(2、3音のコンピングをソロ中に織り交ぜることが多いので歪ませにくいということもあるのだろう)、ここまで全体の音量が上がってしまうと、彼はミドルをかなりあげる人なので自然と歪んじゃうのかもしれない。とはいえこの曲に関してはピッキングのダイナミクスを消す、というところが狙っている効果としても大きいのかな。

動画はマット・ブリューワー (B) 、ジャスティン・フォークナー (D)との演奏で、ここでフォークナーが超スーパープレイを繰り出してしまっているばっかりに、アルバム版のサタイショーン・ソーリーのドラムがどうもこじんまり聴こえてしまう、という。でも何度も繰り返し聞き続けることを考えると、かなり丁寧にラーゲのソロに対応しているソーリーのドラムの方が良いのかもしれない。

「3. Suppressions」ではのっけから生音に重ねられた電子音に驚かされる。本アルバムを通底するこのアレンジは賛否ありそうだが、ぼくはかなり肯定的に聴いている。ピヨ~~ホエ~~という機械的な音が重なってくる感じは若い頃のカートの楽曲を思い出す。たとえば個人的に好きな曲なのだけど、お蔵入りになった90年代のカートのアルバム『Under It All』に収録されている「Portuguese」とか。ちなみにラーゲのベストテイクはこの曲じゃないかな。「5. Ray Ray」も同様のピヨ~ホエ~曲といっていいかもしれない。ここではエレハモのフリーズ(ピアノのペダルのような感じで出力音を引き伸ばすことのできるエフェクター。詳しくはhttps://kcmusic.jp/ehx/freeze.htmlをつかっているのかな。

前回ギラッド・ヘクセルマンを取り上げたときにも書いた気がするのだけど、即興演奏を主とする楽曲を「アルバム」という形式で発表する際の事後的な音色の処理や音の追加に関して、多くのジャズミュージシャンが肯定的に取り組んでいることはとても良い傾向だと、個人的に思う。ライブはライブ、アルバムはアルバムなので、スタジオでしか作れない音とそのときのインプロヴィゼーションのあり方をもっともっと探求していけばいい。とはいえ本作、音がちょっとこもりすぎているような気もする。そこはもう少し改善してほしいろころ、、。 

 

○ Julian Lage / Love Hurts

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Julian Lage (G) / Jorge Roeder (B) / Dave King (Ds)

事後的なスタジオでの音のアレンジにぼくは肯定的なわけだけど、ジュリアン・ラージの新譜はそんなもの吹き飛ばすくらい即興感に溢れた演奏になっている。ライブで普段やってる曲を一発で録りました!みたいなハイテンションで繰り出される4ビート曲が中心だが、とはいえ各曲が3〜5分でコンパクトにまとまっていて(全員でソロをまわす、ということはなく)凝縮された演奏になっているということもあり、ライブでの演奏とは一線を画している。

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動画で紹介したのはアルバムでいうと2曲目、オーネット・コールマンの名曲のアレンジ。基本的にはオーネットをリスペクトした忠実なアレンジになっているのだけど、リズムもハーモニーもゆらゆら、やわらかく有機的に、遊戯的に変動しつつドライヴする。

ベースのホルヘ・ローダーはジュリアンとは古くからの相棒で、4ビートでのグルーヴの作り方が強烈。メロディアスなベースラインもトリオ編成で非常に有効に働いていて、ジュリアンとの息の合い方は唯一無二だ。少々おとなしめだった『アークライト』、『モダン・ロア』に比べ、今回はジュリアンの秘められたヤバさ、みたいなものが少しでていたのでよかったと思う。とはいえまだまだ、この人の狂気はこんなものじゃない。そろそろクインテット、カルテットでも演奏が聴きたいところだが、、。

 

○ Chris Potter / Circuits

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Chris Potter (Ts, Ss, Cl, Fl, Sampler, G, Key, Per) / James Francies (Key) / Linley Marthe (El-B on #3, 4, 5, 8) / Eric Harland (Ds) 

クリポタ最新作。兎にも角にも本作の一番のポイントは、ドラムがエリック・ハーランドだということだろう。超絶タイトかつどこかポップな彼のドラムが、アルバムを通してものすごく大きな役割を担っている。

下の動画からはアレンジの前段階を伺い知ることができるが、こういうけっこうちゃんとセッションして録った音を、どう事後的に再-構成するのか、というところの技術が、以前のクリス・ポッターはとは比べものにならないくらい洗練されているのが今作。

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今回の記事で何度も触れているけれど、『Circuits』の場合どこまでがサンプリングでどこまでがエフェクターの効果でどこまでが打ち込みでどこまでが即興演奏なのか、という判断がまったく成立せず、それらが混濁し一体化したかたちで各楽曲が成立している。ゼロから楽曲を「つくる」作業とは異なり、インプロヴィゼーションを軸にした「書き直し」や「修正」のプロセス(からの「録りなおし」も含め)こそが、こういうアルバムの作り方として前景化してくるはずで、それは自分の空間のつくりかたにも直結する問題なので、もっと詳しく知りたいところだ。

 

○ Aziza / Aziza

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Chris Potter (Ts, Ss) / Lionel Loueke (G, Vo) / Dave Holland (B) / Eric Harland (Ds)

ポッターの新譜にあわせて、そういえば聴きそびれていた『AZIZA』も聴き込んでいた。とても面白いアルバムで、今まで避けていたことを後悔する。オーネル・ルエケってぼく、少し苦手で、ハンコックとやっているのを聴いて以来ずっと避けてきたのだけど今回の演奏を聴いてすごく反省した。こんなうまかったのか、、というか普通にこの人めちゃくちゃ上達しているのではないか、、と(失礼)。強すぎる個性がハーランドがいることで中和されている感じ。ハーランドとポッターの相性の良さはあいかわらずなのだけど、個人的には『Circuits』のほうが楽曲としては好きかな。

 

○ Wolfgang Muthspiel / Where The River Goes

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Wolfgang Muthspiel (G) / Ambrose Akinmusire (Tp) / Brad Mehldau (P) / Larry Grenadier (B) / Eric Harland (Ds)

前作のアルバムとほとんど座組は同じで、唯一の変更点はドラムがブライアン・ブレイドからハーランドになったこと(ハーランドすごすぎ、、)。ブレイドに比べアグレッシブなドラムなので、好きな人は好きだろうと思う。前作から引き続きムースピールとメルドーの共演を聞けるだけで大満足なのだけど、この2人の出番をできる限り増やして欲しいというのが本音で、フロントなしのほうが個人的には嬉しいかもしれない、、。トランペットのアンブローズ・アキンムシーレが悪いというわけではなく、彼の演奏も美しいのだけどね。ただこういう空間の大きさを感じるような柔らかいリバーヴのかかった音のペットがフロントで入っていると、ますますECM的なアルバムだなぁと若干うんざりしてしまうところはある(偏見)

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