声にだして読みたくなるブログ

大村高広丨Takahiro Ohmura

FEB.19,2020_決死のあさごはん

 岡崎乾二郎展はなんとしても見なくては、ということで、深夜の高速バスで行き、その日のうちに同じく深夜バスで帰ってくるという強行スケジュールで(いずれも4列シート片道2000円)、急きょ、豊田市美術館に行くことにした。名古屋の知人に連絡をしようかとも思ったのだけれど、なにぶん急だったのと、滞在時間が短かったこと、それに一日ゆっくりと時間をかけて展示を見たかったから、今回は残念だけれど、連絡はしないことにした。

 三河豊田駅前でバスを降りたのが4時50分くらい。でも、最寄の駅のホームはシャッターが下りているし、ましてやお店んなんてどこも開いていないし、頼みの綱だったコンビニのイートインコーナーも6時以降しか利用できないときたもんだから、まいった。始発まで滞在する気満々で野菜ジュースとパンを買ってしまったのに、使えないとは。しょうがないのでコンビニを出て、バス停のベンチに座ってそれを食べたのだけれど、気温は0度である。キンキンに冷えたパンとジュースをお腹に入れて、始発までの1時間弱をなんとか野外でやり過ごす。死ぬかと思ったけれど、電車にのれてほっと一息つくがしかし、豊田駅に着いても「室内」がどこにもない。寒い。どことなく人工的な感じがする駅前には人影もほとんどない。こんなことになるならいさぎよく名古屋まで行っておけばよかったと後悔しながらも(ぼくがのっていた高速バスは名古屋行きだったのだけど、その手前の三河豊田でも下車することができた)、とくにやることもないので駅で待機する。美術館がオープンするのが10時だから、あと4時間もある、、と絶望的な気分になりながら。しばらく時間がすぎて、うっすらと空が明るくなってきたあたりで、早朝からモーニングをやっているカフェが近くにあることを知って、いそいそと向かった。

 木製のドア、モルタル金鏝仕上げの床、壁は粗めの白いスタッコ仕上げ、窓はブロンズサッシ、ウォルナットのテーブル、真ん中に石油ストーブ、のうえにヤカン、から出てる湯気。良い雰囲気のお店だった。とくに迷うことなく600円くらいのモーニングセットを頼む。ドリンクはホットチャイにした。一口飲むと、芯まで冷えていた身体が溶けていくようにほぐれる。ワンプレートには小倉がのった厚めのバタートースト、カイワレをのせたキャロットラペ、サツマイモのポタージュ。ポタージュ、甘くてとてもおいしい。そしてめっちゃ量がある。キャロットラペもクミンとナッツが入っていてとてもスパイシーで、おいしい。小倉はあまり甘くなく、豆の味がする。

 ストーブがあたたかい。輻射ってスバラシイ。窓ガラスはヤカンからでた湯気による結露でキラキラと光っている。そういえばこの時期なんて、実家では結露した窓が当たり前だった。日本海側の冬って湿気がすごいし、暖房は基本的にストーブだったから。でも、関東にきて一人暮らしを始めてからは、冬もエアコンだけで過ごしてきたから(空調暖房は嫌だ嫌だと思いながらも)、露なんて久しく見ていなかった。指でつーっと線を引くと、小さな水滴が大きな水滴になって、下に落ちていく。窓枠は木サッシじゃなくてブロンズサッシのままで正解だな。隣の駐車場にとまっている赤い車と紺色の車に跳ね返った光が、窓ガラスの露にあたって、乱反射して、ぼくの網膜まで届いている。綺麗だなと思う。建築的には忌み嫌われる結露だけれども。でもいいなと思う。

 そう思ったので、iPadを取り出して、バスを降りてからの顛末を急いで書き始めて、今にいたる。そうそう、窓ガラスの露がすげー綺麗だってことがただ伝えたくて、ここまで書いてきたのだった。そうそうそう、現美でみた吉増剛造を撮った映像で、吉増が露でキラキラした窓ガラスに黄色いペンで詩をガリガリと書いていたのだけど、それも思い出したんだった。あれはすばらしい映像だった。あれ以来、窓ガラスをみると詩を書いてみたくなる。ぼくに詩はかけないけれど。 

 そうこうしているうちに美術館の開館時間なので、お店を出ることにする。展示の感想もまた後日書くと思う。

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追記(2020/2/20)

撮影したフィルムを現像した。露はうまくとれてなかった。カフェ(little cockooさん)は外観もかわいらしい。

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Contax S2, Carl Zeiss Planar T* 1.7/50, 記録用 100