2015
千葉県安房郡富浦町に立地する臨海合宿のための寮
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この建築は、夏の特定の数日間、子どもたちが臨海合宿で利用するためだけに計画された。設計者としておこなったことは、プロジェクトの極めて限定的な使われ方にたいしてあくまで素直に、機能的な形態を与えていくことだった。たとえば、夏のある期間、ある時間帯だけに使用されるシャワー室。朝と昼に屋根裏が光り輝き、子供たちを目覚めさせる宿泊室。スケール、素材、構成はその都度最適なものが便宜的に選択され、それらは敷地形状に合わせて順序どおり並べられる。
結果として、6つの異なるキャラクターをもった形式が複合することになった。シャワー室棟 / 会議室棟 / 食堂棟 / 2つの宿泊室棟 / 教員棟が、中心に置かれた無性格・無方向的なボリュームによって綜合される。子供たちは厳密なスケジュールに沿って行動することで、ある特定のリズムでこの形式群を経験する。時間の変化に対し建物が反応し、その反応が生活のスケジュールにぴったりと連動する。
与条件にたいして機能的かつ素直な形式を採るほどに、形態はスペシャライズされた極端なものになっていく。この「極端さ」は、彼 / 女らがここでの経験を思い返したり、みなで思い出を語り合うときのひとつのフックになるものだ。複数の形式は空間化した記憶となり、それらは記憶において、「生きられた家」を組み立てる。相互にばらばらに切り離された経験の素材が、そのつど自在に異なる道筋で束ねられるように。