手前の崖のバンプール

2022 物流型展覧会 / Logistics type exhibition
* 藤倉麻子と共同 / fellowship: Asako Fujikura

 

大村は会場(海上?)構成・美術として、航行ルートの設計、通関業者との交渉、設営、什器のデザイン・制作、リーフレットのデザイン・制作などを担当。

写真:太田琢人

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概要と記録

2022年5月、物流・労働・対岸をテーマにした展覧会「手前の崖のバンプール」が東京湾にて開催された。主催の藤倉麻子はこれまで、都市・郊外を横断的に整備するインフラストラクチャーや、それらに付属する風景の奥行きに注目し、主に3DCGアニメーションの手法を用いて作品制作をおこなってきた。こうした制作テーマの延長として藤倉は昨年、かねてより関心を寄せている東京都湾岸エリアの風景を対象としたリサーチプロジェクトを立ち上げる。このリサーチには、アーティスト・ダンサーとして活動するAokid、建築設計・意匠論を専門とする大村高広、ランドスケープ史を専門とする近藤亮介、建築設計・都市論を専門とする齋藤直紀が参加し、フィールドワークとディカッションを積み重ねることで、複数的な視点から港湾の風景を捉えることを試みてきた。

港湾の整備とコンテナによる物流網は現代の都市・国家の運営における極めて重要な存在だ。しかし、私たちの日常生活からはどこまでも遠い(実際、一般に陸から埠頭の港にアクセスすることはできない)。こうした不透明な風景を、物語的な想像力と複数的な語りによって可視化し、消費行動と物流のあいだにあるギャップを架橋すること。これが、リサーチプロジェクトの最初の成果発表となる「手前の崖のバンプール」展のひとつの目標である。物流型展覧会という(聞き覚えのない)ネーミングの通り、本展では埋立地で日々繰り広げられている物流のダイナミズムと視-聴覚的スケールに注目した空間表現を港湾の現場に介入する仕方で展開することで、ロジスティクス(=物流)の批判的な検証を試る。

 

初の物流型展覧会となる本展は、チケットとして事前に送付される材木を所定の目的地まで運輸することを参加者に指示する。材木にはQRコードが掲載されており、参加者はこの情報を手がかりに出発地点(青海埠頭の船着き場)に集合する。小型船舶に乗り込み、青海コンテナ埠頭、大井埠頭といった物流拠点を約45分かけて巡る。

写真:太田琢人(以下、写真はすべて太田琢人)

 

 

ガイド・ダンス(略してガイダンス)のAokidはクルージングを先導し、風景のリズムやスケールを身体を通して捉え、記録し、観客に開示しながら、ときに共同して船上で踊る。

 

目的に到着すると、徒歩1分の通関業者の道具場まで移動し、海上からの風景とも連動した藤倉の映像作品を鑑賞する。藤倉の映像(=光)は様々な道具や資材が正確に位置づけられた実務的な空間に対して、私的な想像力を拡張した別の空間のレイヤーを挿入し、拮抗させる。物流の場とフィクショナルな想像力の場が──労働的な行為を媒介に──仮設的にすれ違う。

貨物(チケット角材)を収めた対価として、参加者はリーフレットを受け取る。リーフレットは、藤倉によるグラフィック、近藤亮介の論考「ランドスケープの生まれるところ──東京湾岸覚書」、齋藤直紀による東京湾岸の侵入可能領域と正視可能領域を図面化したリサーチ、Aokidによるリサーチ日誌、大村によるリサーチの基本的な問題意識を書き留めたテキスト「崖っぷちの労働と遊び」を収録。

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中島水緒さんによる、当日の経験を追体験できるような極めて詳細なレビューがウェブ版の美術手帖に掲載されています。次の展開が想像されるような、ワクワクする素晴らしいテキストです。ぜひご一読ください。

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